1. 今日の相談
「補助金の申請をすることになったんです。でも申請書の『事業の概要』とか『取組の内容』みたいな欄が、どう書いたらいいか分からなくて……記入欄は小さいのに、もう三日も白いままです」
これも、小さな会社や個人事業主の方からよく聞く相談です。やってきたことは、ちゃんとある。お客さんもいるし、工夫もしてきた。でも「申請書の文章」となると、急に別の言語に見えてくる。「事業の強みを簡潔に記載してください」と言われても、簡潔ってどれくらい? 強みって何て書けば?——そのまま時間だけが過ぎていく。
締切は近づいてくる。この最初の一歩をなんとかしたい、というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。あなたが三日止まってたんは、事業に中身がないからやない。「役所の文体」に翻訳するのが難しいだけや。翻訳はAIの得意技やで。
そうなんです。申請書に書く中身——何をやっているか、誰のためか、何を変えたいか——は、あなたの頭の中に全部あります。足りないのは「申請書らしい文体への翻訳」だけ。
今日やるのは、自分の言葉で話すように書き出して、翻訳をAIに任せること。かしこまった言葉は、ひとつも用意しなくて大丈夫です。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 話し言葉の説明を、申請書向けの文体に翻訳してもらいます。
申請の要項(募集案内)も手元に置いておいてください。使うのは最後の確認のときです。
4. 実際にやってみる
順番にいきましょか。
ステップ1:話し言葉のまま、事業のことを書き出す
「うちは○○をやってて、お客さんはこういう人が多くて、最近こういう工夫を始めた」——友達に説明するつもりで、そのまま書きます。きれいな文章にしなくて大丈夫。
このとき1つだけ約束。社名・取引先名・具体的な金額は「A社」「B社」「◯円」に伏せてから貼りましょう。返ってきた文章で元に戻せば大丈夫です。
ステップ2:ChatGPTに、このまま頼む
次の説明を、補助金の申請書に書く文章に整えてください。 「事業の概要」「現状の課題」「今回の取組内容」の3つに分けて、 申請書にふさわしい丁寧な文体で、それぞれ3〜4文にまとめてください。 説明にない実績や数字は付け足さないでください。
「説明にない実績を付け足さないで」は必ず入れてください。申請書で一番あかんのは、盛った内容が事実と違うことです。
ステップ3:要項と照らして、事実だけ確認する
返ってきた文章を、募集要項の記入例や注意書きと照らします。欄の字数に合うか、聞かれていることに答えているか、そして書いてあることが全部事実か。ここは申請者本人にしかできない、いちばん大事な仕事です。
ほー先輩:AIの文章はきれいやけど、提出するんはあなたの名前や。最後の照合だけは、ゆっくりやってな。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空の事業の例です)
ビフォー(話し言葉の書き出し)
うちは小さい弁当屋。お客さんは近所の工場の人が多い。
最近 注文をLINEで受けるのを始めたら間違いが減った。
これをちゃんとしたシステムにしたい。レジも古い。
アフター(ChatGPTが翻訳した下書き)
【事業の概要】
当店は地域の事業所向けに弁当の製造・販売を行っており、近隣の
工場等に勤務する方を中心にご利用いただいております。
【現状の課題】
現在は電話等での受注が中心であり、注文内容の聞き間違いや記録
漏れが発生しやすい状況にあります。また、レジ設備の老朽化も
課題となっています。
【今回の取組内容】
受注管理をシステム化し、注文の正確性と業務効率の向上を図り
ます。あわせてレジ設備を更新し、会計業務の負担を軽減します。
三日止まっていた欄の下書きが、5分でできました。あとは要項と照らして、字数と事実を整えるだけです。
6. 使ってみた感想
正直、最初に返ってきた文章を見たときは「うちの店のことなのに、ちゃんとした事業に見える」と笑ってしまいました。中身は同じなのに、文体が変わるだけで伝わり方がこんなに違うのかと。
良かったのは、一歩目のハードルが消えたこと。下書きさえあれば、直すのは苦になりません。
一方で、注意も実感しました。AIは頼み方次第で、それらしい実績を勝手に足してくることがあります。「説明にない実績は付け足さないで」の一文と、提出前の要項照合。この2つはセットで習慣にするのが安心です。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 三日止まっていた申請書の欄に、5分で下書きが入った。
- 「話し言葉→申請書の文体」への翻訳をAIに頼む型を覚えた。
- 「社名や数字は伏せて貼る」「盛りを防ぐ一文を入れる」という安全策が身についた。
申請書のほかの欄も、同じやり方でいけます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:書類の言葉はAIに任せてええねん。あなたの仕事は、書いたことに嘘がないか、ゆっくり見ることや。一番むずかしい一歩目はもう越えたで。また詰まったら寄ってな。
やさしいAI仕事術