1. 今日の相談
「行事のあとに集めたアンケート、選択式のところはいいんです。でも、自由記述がたくさんあって。『こう思いました』『ここが良かったです』みたいな声が、何十件も。ありがたいんですけど、これをどうまとめて報告したらいいのか……。全部読み返して、似たものをまとめようとするんですけど、途中で分からんようになって、手が止まってしまうんです」
福祉や保育の現場、行事や研修のあとに、本当によく聞く相談です。自由記述は、書いてくれた人の生の声。数字と違って、そのままでは「何が語られたか」が見えにくい。かというて、一件ずつ全部を報告に載せるわけにもいかない。まとめようとすると、頭の中がいっぱいになって止まってしまう。
この「たくさんの声を、どう見える形にするか」を、なんとかしたい——というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。まず一個、大事なこと言うとくわ。自由記述をまとめるっちゅうのは、「数える」ことやない。「似た声を並べて、何が語られてるかを見えるようにする」ことや。数にした瞬間に消えてしまう一言に、いちばん大事なヒントがあること、ようあるからな。
そうなんです。今日やるのは、集計でも統計でもありません。似ている声をテーマごとに並べ直して、「どんな声があったか」をひと目で分かるようにすることです。AIには、その作業に使う空の分類表と確認手順だけを作ってもらいます。実際の自由記述はAIへ貼らず、職場で承認された表計算や集計環境で人が整理します。
ひとつだけ約束。少数の声、1件だけの声も、消さない。「みんながこう言っていました」と多数派にまとめてしまうと、たった1件の大事な気づきが埋もれます。今日は、声を大事にするまとめ方をします。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは2つです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 架空の回答だけを例に、分類表の列と確認手順を作ってもらいます。実際の回答本文は渡しません。
- 職場で承認された表計算・集計環境 … 実際の自由記述を読み、分類と原文照合を行います。
回答本文には、名前を消しても出来事や属性の組み合わせから個人が分かる内容、健康・家庭事情などの機微情報が残ることがあります。単なる匿名化や言い換えだけで一般向けAIへ渡せるとは判断しません。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:AIには架空例だけを渡し、空の分類表を作る
実際の回答とは関係のない架空例を使い、分類表の型だけを作ります。
次の架空の回答だけを例に、自由記述を整理するための空の分類表を作ってください。 列は「回答番号」「仮のテーマ」「原文の要点」「少数でも残す理由」「確認事項」にしてください。 人数・割合・優先順位を推測せず、空欄の表と作業手順だけを出してください。
架空例:受付が分かりやすかった/休憩場所の案内がほしかった/また参加したい
ステップ2:実回答は承認された表へ置く
AIが作った列だけを、職場で承認された表計算や集計環境へ移します。そこへ実際の回答を1件ずつ置き、人が原文を読んで仮のテーマを付けます。一般向けAIへ回答本文を移しません。
職場に回答本文を扱える承認済みの分析環境がある場合も、担当部署のルール、保存先、アクセス権、利用範囲を先に確認します。この記事だけを根拠に利用可否を決めません。
ステップ3:似た声を人が並べ、原文へ戻る
仮のテーマごとに並べたら、見出しが原文の意味と合っているかを確認します。そして、少数でも安全や権利に関わる声が残っているかを必ず見ます。「これは1件だけやけど、改善のヒントや」と思ったら、その声を人が拾い上げます。報告へ載せるときは、回答者を推測できる表現を避け、公開範囲を担当者と確認します。
ほー先輩:多い声はもちろん大事や。けど、1件だけの声を残せるかどうかで、まとめの優しさが決まるんやで。数の大きさやのうて、声の中身で拾ったってな。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空の行事アンケートの例です)
ビフォー(集まった自由記述)
・受付がスムーズで良かった
・子どもが楽しそうだった
・駐車場が分かりにくかった
・暑さ対策の日陰がもっとほしい
・スタッフの方が親切だった
・飲み物が早く売り切れた
・来年もぜひ参加したい
・トイレの場所の案内がほしかった
アフター(AIが作った空の型へ、人が原文を確認しながら整理した例)
【良かったこと】
・受付がスムーズだった
・スタッフが親切だった
・子どもが楽しそうだった
【次回への要望】
・駐車場・トイレの場所の案内がほしい
・暑さ対策(日陰)がほしい
・飲み物の数を増やしてほしい
【その他の声】
・来年もぜひ参加したい
バラバラの8つの声が、3つのテーマに並びました。「飲み物が売り切れた」の1件も、消さずに要望へ。「来年も参加したい」という声も、その他として残しています。数字にはせず、声のまま見える形です。
6. 報告へ使う前の確認
人が付けた仮のテーマ名は、唯一の分類ではありません。元の自由記述を読み返し、意味が変わった声や、別のテーマへ移すべき声がないかを確認します。
「多くの方が」「満足度が高い」のような、元データにない人数・割合・評価が加わっていたら削ります。1件だけの声も消さず、報告では「〇〇という声がありました」と事実の範囲で扱います。
報告へ引用するときも、書いた人が推測できる表現が戻らないかを再確認します。AIは空の型まで、実回答の分類・声の扱い・公開判断は人です。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 実回答を一般向けAIへ渡さず、テーマ別に整理する空の型を用意できた。
- 「少数の声も消さない・数を作らない」という、声を大事にするまとめ方を覚えた。
- 実回答は承認された表で扱い、原文と照合できた。
次のアンケートも、同じやり方でテーマ別に並べていけば大丈夫です。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:わざわざ自由記述を書いてくれる人は、それだけ真剣に付き合ってくれてる人や。その声を、数の大きさだけで切り捨てんと、テーマに並べて、少数の声も拾う。それができたら、もう立派なまとめや。書いてくれた声をちゃんと受け取れたら、それがいちばんの報告になるんやで。今日もよう頑張ったな。
やさしいAI仕事術