1. 今日の相談
「連絡帳とか、所見を書くときに困るんです。その子の良いところは、ちゃんと見てるつもりなんです。今日も頑張ってたなあ、って。でも、いざ書こうとすると『元気に過ごされました』『楽しそうでした』——毎日それしか出てこなくて。同じ言葉の繰り返しになってしまって、これでちゃんと伝わってるんかなって」
福祉や保育の現場で、本当によく聞く相談です。良いところは見えている。でも、それを言葉にする途中が、うまくいかない。「見た」と「書く」のあいだに、ひと山ある。忙しい中で、その子だけの様子を、あたたかい言葉にするのは、思った以上にむずかしいものです。
この「ちゃんと見た良いところを、その子だけの言葉にする」ところを、なんとかしたい——というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。「元気でした」しか出てこんのは、あなたの語彙が足りひんからやない。あなたはちゃんと見てる。ただな、「見た事実」を「言葉」にする、その途中が抜けてるだけなんや。そこを今日は手伝ってもらお。
そうなんです。良い連絡帳の書き方のコツは、いきなり「良い言葉」を探すことではありません。まず今日見た「事実」を1つ思い出すこと。「初めて自分で靴を履けた」「お友だちにおもちゃを貸していた」——その具体的な事実さえあれば、あたたかい言葉は、あとからついてきます。
今日やるのは、実際に見た事実を職場の正式な記録へ残し、AIには架空の行動だけを使って「事実から書く言い換え方」を練習することです。ひとつ大事な約束は、盛らないこと。「大きく成長しました!」のような誇張ではなく、元記録にある事実だけを人が文章にします。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT … 実在の子ども・利用者・家族・施設・日時・出来事を含まない架空の行動から、事実を超えない言い換え方を練習する場合に使います。
実際の観察記録、連絡帳、所見、支援記録はAIへ渡しません。名前を記号に変えても、行動・場所・日時・家族・診断・珍しい出来事の組み合わせから本人が分かる場合があります。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:実際の事実を正式な様式へ記録する
職場の連絡帳・所見・支援記録のルールに従い、見た時刻・場面・行動を元の記録へ残します。「がんばっていた」(評価)と「何回か試した」(観察事実)を分け、健康・安全・事故・服薬・送迎・家庭事情・個別配慮は担当手順へつなぎます。
ステップ2:架空の事実で言い換え方を練習する
「架空の人物が、架空の場面で、道具Aを3回試した」のように、実際の記録を元にしない練習例を作ります。
ステップ3:ChatGPTに、架空例で頼む
次は、言い換え練習用に作った架空の観察事実です。 ①連絡帳の文型として、短く落ち着いた一文にしてください。 ②書いた事実だけを使い、良く見せるための誇張は加えないでください。 ③診断、性格、成長、気持ち、家庭事情、因果関係を推測しないでください。 ④言い回しを2〜3パターン出してください。
【架空の観察事実】 (実在の人・施設・日時・出来事を元にせずに書く)
コツは②「誇張は加えないで」です。AIは頼むと、つい「大きく成長しました」「素晴らしい一日でした」と盛ってしまいます。でも、盛った言葉は、読む人にはなんとなく伝わってしまうもの。事実からの言葉こそ、その子だけの、本当のほめ言葉になります。
ステップ4:実際の文章はAIの外で書く
AIの出力は、事実と評価を分ける練習例です。実際の連絡帳や所見は、AIの画面を閉じ、正式な観察記録を見ながら人が書きます。本人の気持ちや成長の理由を推測せず、元記録にない”盛り”を入れません。その人を見ていたのはAIではなく、あなたです。
ほー先輩:ほめ方に、上手も下手もないねん。ちゃんと見て、見たとおりに書く。それだけで、その子だけの一文になる。盛らんでええ。見たことが、いちばんのごちそうやからな。
5. 完成例
架空の練習例で見てみましょう。
ビフォー(今日見た事実の走り書き)
・今日、初めて自分ひとりで上履きを履けた
・何回か挑戦して、できたとき うれしそうに笑った
アフター(ChatGPTが整えた連絡帳の一文・2パターン)
パターン1:
今日は、上履きを自分ひとりで履くことに挑戦しました。
何度か試すうちに上手に履けて、できたときのうれしそうな笑顔が、とても印象的でした。
パターン2:
自分で上履きを履こうと、あきらめずに繰り返す姿が見られました。
履けた瞬間、ぱっと笑顔になって、こちらまでうれしくなりました。
架空の事実2つから、誇張を避けた文型を確認できました。実際の連絡帳へこの架空文を流用せず、正式な観察記録から人が書きます。
場面別の書き方の例(そのまま使えます)
[ ] の中を、その日に見た事実に入れ替えてください。ほめる言葉を探すより、事実を丁寧に書くほうが伝わります。
① できるようになったこと
今日は、[やっていたこと]に挑戦していました。
[何度か/時間をかけて]取り組み、[できたこと]。
できたときの[表情・様子]が印象的でした。
② うまくいかなかったけれど、挑戦していた
[やっていたこと]に取り組んでいました。
今日は[思うようにいかなかった場面]がありましたが、
[あきらめずにしていたこと]姿が見られました。
「できなかった」で終えません。していたことを書きます。
③ お友だちとの関わり
[活動名]の場面で、[本人の行動]が見られました。
[そのときの様子]。
他のお子さんの名前や様子は書きません。本人の行動だけを書きます。
④ その子らしさが見えた場面
[場面]で、[本人がしていたこと]。
[それを見て気づいたこと。「〜な一面が見られました」]
⑤ 保護者からの相談に答える
[相談内容]についてですが、園(事業所)では[観察できた事実]です。
[こちらでしている関わり]をしています。
ご家庭での様子と違うところがあれば、お聞かせいただけますと
一緒に考えやすくなります。
断定せず、家庭の様子を聞く形にします。専門的な判断は、記録ではなく面談や専門職の場で扱います。
⑥ 特に変わったことがない日
今日も[活動名]に参加し、[普段どおりの様子]でした。
[小さくても見えたこと]。
「特にありません」で終えない。穏やかに過ごせた日も、伝える価値があります。
⑦ 体調の変化・ケガがあった日
[時刻]ごろ、[場面]で[確認できた状態]がありました。
[対応したこと]をしました。
[その後の様子]。
ご家庭でも様子を見ていただけますと幸いです。
原因を推測しません。「ぶつけたようです」ではなく、見た事実と対応を書きます。
連絡帳で気をつけたいこと
- ほめ言葉を探して盛る— 「すごく成長しました」より、何をしていたかを書きます
- 他のお子さんのこと— 名前も、様子も書きません。保護者が読む文書です
- 診断的な表現(「発達が〜」「自閉的な」)— 記録に書くことではありません
- できなかったことだけ— その日にしていたことも、必ず添えます
- 保護者への要求が続く— 「ご家庭でも〜してください」ばかりだと、読むのがつらくなります
- 毎日同じ文— 定型でも、その日に見た事実を1つ入れると、読む人に届きます
- AIへ実際の記録を渡す— 氏名・状態・家庭の事情は、承認された環境の外へ出しません
事業所内に残す支援記録は、支援記録の書き方と例文のほうが様式に沿います。
6. 書くときに大事なこと
連絡帳や所見では、評価より先に、実際に見た行動を置きます。「素晴らしく成長した」のような大きな評価ではなく、「自分から道具を片づけた」のように、確認できる事実をやさしい言葉へ整えます。
AIは、本人の気持ちや成長の理由を知りません。「うれしかったようです」「自信がつきました」とメモにない内面を足したら削り、分からないことは分からないままにします。
実際の観察記録はAIへ入力せず、職場で承認された様式と保管先で扱います。名前、学校、家族、診断、日時、場所、珍しい出来事の組み合わせから本人が分かるため、記号化だけで安全とは考えません。AIは架空例での練習、実際の事実と配慮に責任を持つのは見ていた人です。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 実際の事実を正式な記録へ残し、架空例で言い換え方を練習できた。
- 「評価でなく事実から・誇張しない」という、ほめ方の型を覚えた。
- 実際の観察記録をAI工程から外せた。
明日もまた、その子の「ちいさな事実」を1つ見つけるところから始められます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:ほめるっちゅうのは、盛ることやない。その子をちゃんと見て、見た事実を、やさしい言葉にすることや。上手な言葉より、「ちゃんと見てたで」が伝わる一文のほうが、なんぼも嬉しい。今日見つけた小さな事実、それがもう、その子への何よりのプレゼントやで。今日もよう見ててくれたな。
やさしいAI仕事術